shine or die!!!

無気力大学生は幸せな未来の夢を見るか?

平成32年

消した小説のネタ。そのまま供養しておきます。

 

 

2020年6月。新型コロナの流行により外出自粛やイベントの中止が余儀なくされていた。

俺は江川《えがわ》圭祐《けいすけ》。21歳の大学生だ。
上京して3年目。アパートでのひとり暮らしには慣れている。
2年間は単位を落としながらも適当に学び、バイトをしてサークルで遊びまくる充実した大学生生活《キャンパスライフ》を送っていた。
2年で卒業に必要な単位もほぼ取り終わり、今年から就活に本腰を入れる、という時にこれだ。
おかげで遊べないどころかキャンパスにも入れない。友人にすら会えない状況。
夏のインターンシップも全て中止。今の状況じゃ新卒だとしても取ってくれる企業は少ないだろう。
それにバイト先でクラスターが発生し休業中。
シフトの関係などで運良く俺との濃厚接触者がおらず検査は受けなかった。
国から10万は貰ったがどうせ家賃と光熱費ですぐ消える。手当を貰ってもあっぷあっぷだ。
適当にオンラインで出席して、適当にレポートを書き終え提出する。ああ、暇だ。暇だ。

15時。缶チューハイを開ける。これで3本目。昼間から酒を飲むとは堕落した生活だ。
……たまには外に出なければ。

まあ近所くらいなら密を回避すればいい。
コンビニに行って缶チューハイを買い、家電屋でゲーム機の抽選予約をして帰る。今日はそれだけでいい。

ドアを開ける。少し頭がフワフワしているが大丈夫だろう。フラつきながら階段へ向かう。最近は家から出る機会が少なくて……

「あっ」
酔っていた俺は階段から足を滑らせた。そのまま転げ落ち、全身が打ち付けられる。
途中から意識も飛んだ。

意識がぼんやりとある。目の前は真っ白だ。
多分だが、俺は死んだ。俺の魂がどこにいるかは分からない。
きっと俺の肉体は階段の下で血を流しながら倒れているだろう。
そして誰かに通報され救急車を呼ばれているか、それともすでに搬送済みか。
走馬灯は流れないし、三途の川も見えない。けれど俺は死んだんだ。
ああ、俺の人生がこんなしょうもない時、そして情けない事で終わってしまうとは……。

意識が戻った時、俺は何故か自室にいた。パンイチで。
その場に置いてある服をとりあえず着る。周りにはビールの缶が積んである。
時刻は11時。カレンダーは8月になっている。俺は2ヶ月間の記憶が飛んでいるのだろうか。
洗面台の鏡を見る。確かに俺だ。別人の肉体に入ったわけではないらしい。

スマホで検索しよう。いつもだったら大体ポケットの中に入っているがこんな時に限ってポケットの中には何もない。
スマホを探している最中、新聞が目に入る。
「~選手、銀メダル 日本新達成」

……は?2020年東京オリンピックは2021年に延期になっただろ?

スマホを必死になって探す。何故かクローゼットにあるスーツのポケットの中に入っていた。
ニュースサイトを開くがオリンピック一色だ。コロナのコの字も見当たらない。
そして夏の甲子園も開幕している。

「新型コロナ」で検索するがコロナビールコロナワールドの記事ばかり。
コロナウイルス」で検索しても新型のコロナの記事は一切ない。一般的なコロナウイルスについての解説ばかりだ。
おかしい、なにかがおかしい。

俺は一つの仮説を立てる。パラレルワールドだ。
あの階段からの転落により並行世界へ飛んだ。まるで小説や漫画、アニメのような話だがこれ以外考えられない。
まあ、並行世界といっても少し違う世界線なだけ。すぐに慣れるだろう。
その場合は元の世界の俺が死んでいるのか、行方不明になっているのか、はたまた存在すら消えているのかは分からないが……。
とにかく俺はこの世界で生きていく。夏休みも通常通り楽しめばいい。
違うのは新型コロナが流行ったか流行っていないか。

とりあえずこの世界に慣れるために情報収集をする。
適当にニュースを開くとある文字が目に入った。

平成32年

今年は令和2年のはずだ。少しパニックになる。
「今年の西暦」で検索する。平成32年と出てきた。
今度は「令和」で検索する。全く出てこない。

この世界の違いは新型コロナが流行ったか流行っていないかだけではない。
もっと大きな「何か」があるようだ。