shine or die!!!

無気力大学生は幸せな未来の夢を見るか?

なんか

もう一つ。下書きに残ってたのを完成させた。

タイトル「閉店」

 

 

15年ぶりに地元に帰ると、近所の小さなショッピングセンターが潰れていた。
跡形もなく更地となっていた。潰れてからどれくらい経っているのだろうか。
草が生い茂って、土地の真ん中には「テナント募集中」の看板が立っている。
看板の色も落ちている。こんな田舎の片隅のでかい土地なんて今更誰が買うのだろうか。

 

仕方ないよな、上京する前からすでにボロボロだったしな。
ここで服を買って、ショボいゲームコーナーで飛行機の形をしたのりものに乗せてもらい、洋食屋やうどん屋で昼食を食べ、スーパーで買い物をして。
地元のショッピングセンターだし、他の地域から遠出して人が来ることは少ない。
店員も客も名前も分かる程大体顔見知り。

 

 

中学生の頃、大型ショッピングモールが出来た。
ここには殆ど来なくなった。
たまに白黒のチラシでセールを呼びかけている時だけなんとなく見に来ていた。
その時もうどん屋で昼食をとっていたかな。

 

潰れていて悲しい、という気持ちは出なかった。
まあ目的はここに寄ることではない。実家に帰って両親に顔を見せる事と地元の旧友に会う事が本来の目的だ。
まあ数年前の結婚式で両親にも旧友にも会っているからそこまでワクワクはしていないんだけど。

 

夕方に家につく、とは伝えたが現在14時。流石に早すぎた。
適当に近所のハンバーガーショップで昼食を取り、早めに家へ向かうか。

ハンバーガーショップへ向かう途中、ショッピングセンターに入っていたうどん屋が家の近くのテナントに入っていることに気がつく。営業中だ。


ガラリと戸を軽く開ける。「いらっしゃい」と掛け声がする。
店内はもちろん変わっていたし、店主も老けてはいた。
でも、あの頃の雰囲気は残っていた。
海老天うどんを注文すると、「あんた、平山さんの所の子か?」と聞かれた。
はい、と答えると「久しぶりじゃないか」と言われた。

 

 

ショッピングセンターの跡地に行った事を話す。

「まあ最後の方はボロボロだったからな、客も大型ショッピングモールに取られちゃってよ」
「それよりこの店の事覚えてくれていたのか?」

「もちろんです、帰ってきたらこの店で昼食を取ろうかなと思っていましたし」

「そうか、じゃあ坊主がちっちゃかった頃に好きだった海老天、一個おまけしてやるよ」

 

通常は海老天が2つの海老天うどん。サービスで3つに。
「あいよ」とカウンターにうどんが置かれる。

箸を割り、「いただきます」とつぶやく。
すする。醤油ベースのよくあるうどん。海老天もよくある美味しさだ。
平凡な海老天うどん。チェーン店のうどんの方が好きという人の方が多いかもしれない。
でも、あの頃の味だった。

 

 

14時で客は俺しかいない。テレビもなく静まり返っているのも寂しいので近況を話すことにした。
上京して大学を卒業して働いている事とすでに結婚している事、久々に休みが取れたから地元に帰ってきた事。
店主は「そっかそっか、大きくなったな」と相づちを打ってくれる。
思い出話に花が咲く。幼馴染の有希ちゃんに2人子供がいる事や、先輩の川西さんが父親の会社の後を継いだ事、そして地元の友達は今でもここに足を運んでいる事など。
店主は「常連の顔は時間が経っても忘れないよ」と微笑んだ。
つゆを飲み干す。少し胃はもたれたが、とても懐かしく思えた。

 

 

680円を支払う。
1000円でお釣りを貰う時、「そういえば洋食店もありましたよね」と訊ねる。
店主は小銭を数えながら「確かあの店も近くに移転して店を続けている」と言った。

 

 

早めに実家に帰り、今日のことを話した。
母さんは「ケンちゃんは昔から海老天が好きだもんね」と言う。
「そうだ、今日はエビフライとエビのお寿司もあるからね」

 

夕食は「帰ってきたから」という理由でオードブルと寿司。
親戚も集まり軽い宴会場のようになる。
俺がメインのはずなのに、いつの間にか酒の進んだ親戚のおっちゃんが話の中心となっていた。

 

お開きになる。風呂はあの頃と変わらず狭いし、実家に置いてあったシャツは少し臭い。
久しぶりに自分の部屋に入る。少し焼けてはいたが漫画や雑誌もあの頃のままだ。
照明の紐を引っ張り、部屋を暗くする。
布団に入り、今日の事を思い返す。
地元に帰ってきて良かったな。まだまだ予定があるのに。